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2016年 今春のスギ花粉と舌下免疫療法

あけましておめでとうございます。

いよいよ平成28年(2016年)が始まりました。今年は4年に一度のうるう年・オリンピックイヤーです。8月5日開幕のブラジル・リオデジャネイロでのオリンピックが今から楽しみですね。2020年の東京オリンピックもすぐそこです!

  昨年末から今年のお正月にかけて、ここ鹿児島の薩摩川内では春のような穏やかな(むしろ暖かすぎるくらい)気候が続いております。12月に氷点下になった朝は、ほとんどありませんでした。わずかな気温の変化が、自然界に与える影響は少なくはありませんね。元旦、近くの神社に初詣に行ってまいりました。例年なら、枯れている雑草が今年は青々と生えておりました。また、昨年末には春の便りの一つである梅の開花が、高松では12月14日(観測史上最速!)、松山や奈良では12月下旬に確認されております。気象庁によると平年より40日も早く開花したとのことです。昨今の異常気象のニュースが日本をはじめ、世界中から報道されております。地球温暖化やエルニーニョ現象など、無視できなくなってきております。自然との共存が大切なのはわかっているはずですが、なかなか難しい問題です。

『今年のスギ花粉予測』

 「梅の咲くころには、スギ花粉の季節ですよ!」といつも患者さんに説明しておりますが、この暖かい冬の影響は、スギ花粉の飛散の開始時期にも多少影響するのでしょうか?日本気象協会や環境庁が、毎年、花粉飛散予測情報を発表します。これによると2016年の1月と2月は西日本と東日本では冬型の気圧配置が長続きしない見込みで、スギ花粉の飛散開始は、西日本と東日本では例年より早いところが多く、北日本では例年並みとのことです。ただし、スギ花粉は飛散開始と認められる前から、わずかな量が飛び始めます。2月上旬に飛散開始が予測されるここ鹿児島(昨年は飛散開始日は2月4日)では、1月のうちから花粉対策を始めるとよいですよ。

♦ 花粉予測情報のホームページ

 日本気象協会 http://www.tenki.jp/pollen/expectation.html

 環境庁 http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/

飛散開始日とは:花粉が2日連続して確認された最初の日のことです。花粉飛散開始日は、ダーラム法(又はロータリー法)で1平方センチメートルあたりの花粉数が2日連続して1個以上になった最初の日で、本格的な飛散が開始したと考えられております。また、初観測日は、1月1日以降、計測視野内に1個でも花粉が観測された最初の日です。スギの開花日は個体により異なりますので、飛散開始日以前でも、計測にかからない程度の少量の花粉が飛ぶことがあります。

 飛散開始日も注目ですが、スギ花粉の総飛散量の予測がとても大切です。飛散量がスギ花粉症の症状に大きく影響します。つまり花粉の大量飛散・大量暴露により、多少の個人差はありますが、症状が重症化します。スギ花粉の飛散量は「前年夏の天候で決まる」といわれております。スギ花粉の大量飛散は、前年夏の気候が高温で日照が多い猛暑の年でおこりやすいといわれております。それに加え秋口の朝夕冷え込み、残暑が厳しい年はスギの雄花がより成長しさらに増加させるとのことです。昨年(2015年)夏は、北・東日本と西日本で大きく天候が分かれました。北・東日本では、気温は高かったものの日照時間と降水量はほぼ平年並みとなりました。西日本では、低温・日照不足・多雨となり、花芽が形成されにくい気象条件となりました。 このため花芽が多く形成される気象条件のそろった東北地方ではやや多く、そのほかの地域では、花粉の飛散数は例年より少ない予想です。

 スギ花粉の飛散が確認された1970年代以降、約3年に一度の間隔で大飛散が起こっています。飛散量はスギの雄花の成長と相関性があるといわれ、雄花の成長が著しかった年の翌春は飛散量が多くなります。最近では2013年に大量飛散が確認されております。また過去のデータから、大飛散の翌年は飛散量が少なく、2年続けて大飛散量になることは今までは起こっておりません。2014年の春先は、前年の夏の気温が高く、日照時間が長かったにもかかわらず、花粉の飛散量が少なかったのです。これは、2013年の春先に大量の花粉が飛散したため、これまでのデータ通り2014年は少なかったのでしょう。この相関関係は、気象条件をも凌ぐといって良いと考えられております。しかし、昨今の大きな気象の変化から、これからはこの経験値が役に立たなくなる日が来るのかもしれません。昨年(2015年)春は、全国的にスギ花粉の総飛散量が少なかったのです。

 以下、今春(2016年)の予測のまとめです。

①    昨年との比較:九州・四国・東海地方では前シーズンより多いかやや多く、非常に多く飛散するところもある見込みです。中国・関東甲信地方では前シーズン並み、近畿・北陸・東北地方と北海道ではやや少ないでしょう。マスコミ等、このデータをもって、「今年のスギ花粉はかなり多いですよ!」と宣伝します。ただし、昨年はスギが少なかった年であったのをお忘れなく!

②    例年と比較、:東北地方ではやや多く、そのほかの地域では、花粉の飛散数は例年より少ない見込みです。

 毎年花粉症治療されておられる方は、1月のこの時期は、例年通りの準備・治療(飛散開始からの初期療法や花粉を体につけない環境整備)でよさそうです。

スギ花粉症に対する舌下免疫療法(SLIT

 免疫療法は100年以上まえから行われている治療法です。検査で特定されたアレルギーの原因物質:アレルゲン(ハウスダスト、ダニ、スギ花粉など)を体に少しずつ投与することで、アレルギー体質の改善を期待する治療法(根治療法)です。体にアレルゲン(花粉など)を与え続けることで、花粉が体に危険ではないことを自然に認識させ(免疫寛容という)、花粉に対して過度のアレルギー反応を引き起こさないようにする治療法です。だだし、体に花粉が異物でないと学習させるためには時間がかかります。以前は減感作療法とも呼ばれておりました。免疫療法は現状では唯一の花粉症を治し得る治療法とされています。しかしながら全員には効きません。治療を行った方の20%で花粉症が治癒し、30%以上でかなり楽になり花粉症薬の薬が激減した、20~30%で症状はあるが以前より楽と答えられます。残念ながら10~20%では治療効果がありません。80%以上の方に効果があると報告されております。

 日本では、皮下注射による皮下免疫療法(SCIT)が、大学病院やアレルギー専門外来を中心に、50年ほど前から行われ今でもアレルギーの有効な治療法として行われております。ハウスダスト・ダニで8-9割、スギで7-8割の有効性が認められており、理にかなったアレルギー治療の一つです。治療期間は、低濃度のアレルゲンのエキスを週1回から開始し、徐々に濃度上げ2週に1回から最終的に月1回にして、その濃度をつづけます。効果がでるまでには約3か月かかり、効果を維持するために最低2年、できれば3年以上月1回の注射を続けることが望ましいとされております(鼻アレルギー診療ガイドラインから)。この治療法の短所は、治療期間の長さと副反応です。2-3年この方法を行うとなると、50回以上の通院が必要です。呼吸困難・血圧低下・意識障害などの激しい副反応がでるアナフィラキシーショックが出る可能性があります(1000-2000回に1回程度の気道狭窄、200万回に1回程度のアナフィラキシーショック)。「通院の面倒」「注射の痛み」「副反応のリスク」からクリニックの外来では、あまり普及していないのが現状でした。

 この皮下免疫療法の弱点を解消すべく1990年半ばから医師主導で研究されていたのが舌下(ぜっか)免疫療法(SLIT)です。皮下免疫療法(SCIT)と同じような治療効果が得られ、平成26年(2014年)の1月ようやく厚労省が舌下免疫療法に使うお薬「シダトレイン:鳥居薬品」が承認され、同年10月より医療現場で使えるようになりました。今のところ、12歳以上が治療対象です。また医師が出す処方箋薬剤のため、まずは医療機関を受診し、医師の説明を受けます。ご本人が治療を十分ご理解され、承諾されてから治療開始となります。皮下免疫療法(SCIT)との大きな違いは、自宅で出来る治療で、投与経路が口から舌下に滴下するだけで、注射の痛みがなく、ショックなどの重篤な副反応皮下よりも少ないことです。

 以下、投与方法です。

①    スギエキスの入った液体「シダトレイン」(味は、やや甘く若干酸味あり)を0.2ml(200JAU/ml)から開始します。開始時のみ医療機関で行います。

②    その後は、ご自宅での投薬です。はじめの2週間は医師の指示通りまで増量し、3週目からは1ml(2000JAU/ml)で維持します。ここからは月に一回の診察となります。

 「毎日1回舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間はうがい・飲食を控える」。これを2-5年継続します。

 医療現場での治療開始後1年が経ち、アレルギーに関係する様々な学会で、SLITの治療報告がされてきております。関西医大の濱田医師らは、2015年のスギ花粉シーズンにおける舌下免疫療法治療中のスギ花粉症患者72名で検討し、7割の患者ではいずれの症状もないか軽症で済んでいたとのことです。また、副反応は約3割の患者さんにあったが、大半が軽症かつ副反応は軽微でSLITの継続が可能であったこと。その内訳は、口腔底腫脹4例・口の痺れ2例・喉の痒み3例・鼻汁2例・くしゃみ2例・皮膚の痒み1例・耳の痒み2例・腹痛2例・嘔気2例・蕁麻疹1例で、いずれも軽微な副反応であり、副反応は投薬で全例消失し、SLITの継続が可能だったと述べています。さらに予測マーカーとして血清ペリオスチンが舌下免疫療法の効果の新たな予測マーカーになりうる可能性があることを報告しております。舌下免疫療法を開始するかどうかどうか、血液検査の検査データで「ある程度効果が予測できる」ということです。舌下免疫療法は長期にわたる治療なので、こういう検査データが、近い将来確立され、クリニックでも簡単に検査できるようになるのではないかと期待されます。

 スギ花粉症に対する舌下免疫療法の治療開始時期は、スギ花粉飛散シーズンでない時です。そのため今から希望される方は、今シーズンのスギ花粉飛散終了後(5-6月以降)の開始となります。スギ花粉飛散の3か月以上前(前年の11月)から治療を開始すると効果的です。治療開始は6月から11月中旬までが理想的で、遅くとも12月末までとなります。すでに昨年12月以前にスギ花粉症に対する舌下免疫療法をされている方は、スギ花粉シーズン中も治療を維持することが必要です。舌下免疫治療中でも、まだ花粉症状が強く現れた方は、これまでのお薬(内服薬や点鼻薬)による治療も可能です。

  なお、舌下免疫療法についての情報は、鳥居薬品のホームページ(http://www.torii-alg.jp/)にわかりやすく解説されていますので一度ご覧ください。今後、期待できる治療法の一つですが、長期間にわたる治療で、副反応が全くないわけではなく、さらに即効性のない治療法です。治療開始するときには、担当医と十分ご相談の上、はじめられることが望まれます。また、昨年12月からは、ダニアレルギーに対する舌下免疫療法も認可され、臨床現場で可能となり、治療の選択が広がってきました。かみむら耳鼻咽喉科でも、昨年より舌下免疫療法を行っております。お気軽にご相談ください。

(付録)近所の菅原神社(国分寺町)です。薩摩川内で最も有名な菅原神社は、東郷町にある藤川天神(梅の名所!)ですが、ここ国分寺の神社は963年に創建されたといわれ、境内には腰掛石が残っています。参拝に行くたびに、子供たちにこの石に腰かけさせ、菅原道真公の学業のご利益を賜りますようお願いしております。また、すぐ近くには、薩摩国分寺跡(現在は公園になっております)があるので、もしかしたら、ここが本物なのかもしませんね。歴史の好きな方はぜひ訪れてみてください。http://satsumasendai.gr.jp/spotlist/1799/